この恋は、きみの嘘からはじまった。
「よーし、やろう!」
「うん、ちゃちゃっと終わらせる」
奈々ちゃんは長袖シャツを着ているから、腕まくりをして絵具がつかないようにする。
私は腕につけていたゴムで、肩までの髪を一本にまとめた。
気合い入れて作業の続きだ。
「こっちゃん、呼ばれてるよ」
「え?」
教室を出ようとしていた大道具リーダーが戻ってくる。
指さすをほうを見れば、如月くんがドアに軽くもたれて立っていた。
目が合うと片手を挙げたから、奈々ちゃんをパっと見ると顎でかっこよく「行け」って合図を送ってくれる。
「ありがとう」
奈々ちゃんと呼んでくれた大道具リーダーの両方にお礼を言って、如月くんの目の前まで行く。