この恋は、きみの嘘からはじまった。
だけど、それどころではない。
心臓がバクバクと鳴っている。
「静かにしててね」
腰が抜けて座り込む私を後ろから抱きしめ、片手は口を押えられている。
だからしゃべることはできずにコクコクと何度も頷く。
耳元に息がかかって、くすぐったい。
「あれ?司は?」
「さぁ」
「神隠し?
え、こえぇよ。
そんな本格的なお化け屋敷なのここ?」
「そうかもね」
秋人くんと杉山くんの声が遠ざかっていく。
少ししてまた杉山くんの叫び声が教室中に響いた。
その時、ようやく押さえられていた口が解放される。
「つ、司くん……?」
すぐに口を開き、名前を呼べば回された手の力が緩む。