この恋は、きみの嘘からはじまった。
……ダメだ。
お母さんが作ってくれた大好きな玉子焼きさえも味が分からない。
「緊張してる?」
「し、してます……」
「ははっ、敬語。俺と話す時けっこう改まってるよね」
「だ、だってどうしたらいいか分かんなくって……」
「普通にしてよ」
そんなの無理だよ。
毎日してる食べるという行為でさえ、どうやっていたか分からなくなってしまうほど緊張してるのに……。
「ふっ。桃瀬さん、かわい」
「え、ちょっ……あ、えぇ!?」
やっぱり自分なんて出せなくて、ただ目の前にいる如月くんをチラッと一瞬見るので精いっぱい。