この恋は、きみの嘘からはじまった。
ステージ裏のほうへ足を向け、踏み出したとき。
「琴乃」
後ろから呼ばれて、反射的に振り返ってしまった。
目の前にはさっき逃げてきた相手である小野寺くん。
なんでここに……?
「やっぱりここにいると思ったよ。
前会った男が劇に出るって聞いたからね」
思わず悪寒が走った。
怖い。
なんて恐怖心が芽生える。
だれから司くんのこと聞いたの?
そんな疑問が浮かんでも聞くことはない。
さっき秋人くんに話を聞いてもらって気持ちの整理はついたと思った。
でも、本人目の前にするとやっぱり胸が苦しくて、そしてなにを考えているのかわからない小野寺くんが怖い。