この恋は、きみの嘘からはじまった。
小野寺くんの存在が確実に私の中で膨らんでいる。
小さく、心の奥隅に押し込んだはずの記憶や感情が風船に空気を入れるように大きくなる。
「ねぇ、琴乃。
もっかいやり直そう?」
私はふるふると首を横に振る。
小野寺くんから逃げるように後ずさっていたら、いつのまにか体育館横のフェンスまで追いやられていた。
生徒会イベントが始まったのか、中からは歓声やマイクを通した司会の声が聞こえる。
そのせいで体育館の人の出入りがいっきに減った。
私と小野寺くんが体育館横にふたり。
元カレとふたりでいるなんて、司くんが知ったら気分悪いよね。
早く逃げなきゃ。
「私、もう行くね」
「待ってよ」