この恋は、きみの嘘からはじまった。




だけど、声は鮮明に届く。


司くん、すごく怒ってる。



初めて聞く怒声にビクビクと肩が揺れる。



私のせいだ。

私が油断してたから。





「ふざけんじゃねーよ!」




こんなに荒い口調で低い声を聞くのは初めて。


私の知らない司くん。




私のせいで怒らせてしまった。





「殴るのはだめだって!!」



杉山くんが必死に止める声も聞こえる。

小野寺くんはなにも言ってないみたいで、声は全く聞こえない。





ゆっくりと顔を上げて瞬きして涙を落とす。




少しだけ見えやすくなった視界に、すごく怒っている司くんとそれを止める杉山くん、なんの抵抗もせずに俯く小野寺くんが映る。






私に気づいたのかゆっくり視線を上げた小野寺くんと目が合った。







< 305 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop