この恋は、きみの嘘からはじまった。
「琴乃、ごめ……」
「いますぐ俺の前から消えてくれ」
小野寺くんが口を開いたとき、司くんがそれを遮った。
さっきより落ち着いたかのように小野寺くんから手は離していたけど、声に抑揚がなくて感情を抑えてるみたいで怒りが頂点に達したんだと悟った。
静かに威圧感を放っている。
さすがにその迫力には小野寺くんも負けて、唇を噛みしめていた。
「……じゃあ。
またちゃんと話そう」
その言葉には返事をしなかった。
少しだけ笑ってみせたけど、その小野寺くんの表情はいまにも泣きそうだった。
気を使う余裕なんてなくて、私は小野寺くんから目を逸らした。
ひとつの足音が遠のいていき、やがて消える。