この恋は、きみの嘘からはじまった。
残された私たちのあいだには、さっきよりも重苦しい空気が流れる。
隣の体育館から音漏れがあるけど、水の中にいるかのようにこもってて聞こえづらい。
私はそっと秋人くんのシャツをまた握りしめた。
「琴乃」
司くんが私に手を伸ばすけど、ビクッと肩が大きく揺れてしまう。
無意識だった。
無意識にそんな反応をしてしまった。
顔を合わせられない。
どんな顔して司くんを見ればいいのか。
私は裏切ったも同然。
どんな理由であれ、彼氏以外の人とキスをするなんて最低……。
目頭が熱くなり、鼻がツーンとする。
唇を噛み締めても我慢できなかった大粒の涙が頬を伝った。
「ごめ……なさっ……」
声が震える。
嫌われたくない。