この恋は、きみの嘘からはじまった。




冗談はその格好だけにしろよ。


ウィッグとメイクと衣装で女の子にしか見えない康二。




普通にかわいくなってるんだけど、その違和感のなさがむしろ気持ち悪い。





それから台本チェックや、動いたときの衣装の崩れ具合など細かい確認を行う。






「だれか佐々木くん見てない?」


「秋人がどーした?」





小走りで舞台袖に来たこの劇の監督を務める人がキョロキョロしている。


口にした名前は俺らといつも一緒にいる秋人だから、いち早く康二が反応した。






「まだ来てないみたいで姿がないの」





もう開演10分前になる。


それなのに秋人がいないなんて。




照明はふたりしかいなくてそのひとりが秋人だから、いないと劇が回らない。






< 314 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop