この恋は、きみの嘘からはじまった。
それよりも気になった琴乃の頬に残る涙のあと。
目も赤いし、さっき秋人といて笑って出た涙じゃないことくらいわかる。
それを俺じゃなくて、秋人の前で流したことが気に入らない。
いま口を開いたら琴乃にひどいことを言ってしまいそうで、めちゃくちゃにしちゃいそうで、頭を撫でるだけにおさえた。
琴乃が秋人の気を引こうとしてそうゆうことをする女じゃないってことは知ってる。
俺のことを好きでいてくれてるのもわかる。
わかるけど、それとこれとは話が違う。
なんで秋人に頼るわけ?
やっぱり、俺のこと信じられないのか。
……自業自得すぎて、なにも言えない。
そんなイライラやモヤモヤがどんどん積もっていく。
劇になんて集中できなくて、無でやっていた。
いや、むしろすごい集中していたのかもしれない。
あまり自分がどうやったか覚えていないけど、気がつけば拍手に包まれてキャスト全員並んで礼をしていた。