この恋は、きみの嘘からはじまった。
冷静でなんかいられなくて、頭に血が上って怒りしか湧いてこない。
小野寺をぶん殴りたいのか、罵声を浴びせたいのか。
自分がどうしたいのかわからないから、この怒りの沈め方なんてわかるわけもない。
ただむかついて、いらついて、それだけに支配される。
康二の止める声も耳に届かない。
目の前の琴乃を傷つけた男が許せない。
小野寺を追い返してから琴乃を見た。
名前を呼び手を伸ばせば、大きく肩を揺らし拒絶的な反応をした。
驚いて琴乃を見れば、顔を合わせないように俯き、髪の隙間から見えた頬にきらりと光るものが伝う。
それは次々に溢れ出し、声を震わせながら謝りだした。