この恋は、きみの嘘からはじまった。
手が、声が震える。
足音が私に近づいてくるけど、顔を上げられない。
頭を下げる私の視界に司くんの上靴が入り込む。
「琴乃、顔上げて」
肩に手を置かれ、ゆっくりと顔を上げさせられる。
涙でぐちょぐちょな顔を見られたくないけど、いまはそんなことを気にしている余裕なんてなかった。
「司くんと付き合ってるのに、小野寺くんにキスされたっ……」
私の涙を拭ってくれる司くんにはっきりと言ってしまった。
司くんは目を見開いて、私の頬に触れる手が止まる。
だけど、ちゃんと自分の気持ちを伝えるって決めたから。
「油断、してたから……ごめんなさいっ。
彼女失格だ……。
でも、司くんに別れようって言われるのが怖くて、別れたくなくて逃げた」