この恋は、きみの嘘からはじまった。





「……うん」


「大切なものって失ってから気づくって本当だね。
僕はこの気持ちを抱えたまま、前に進むよ。
もう大切なものを失わないために」




にこっと笑ってくれたけど、その瞳から涙が一滴溢れた。


それを見て、私も涙が零れてしまう。





「まだ、忘れられそうにないけどさ。
心の真ん中にいるけどさ。
いつかは琴乃と同じように、大切な初恋の記憶として大事に奥底にしまうから」


「っ、うん……」


「琴乃の心の中に一生僕が残るってだけで幸せだよ」





小野寺くんの綺麗な涙に、余計に胸が痛くなる。



初恋のときと同じ。

だけど、そのときよりも温かい気持ち。






「僕の心にもずっと琴乃がいるからね」


「うん、ありがとう」






ふたりして涙を流す。


こうやってふたりきりで話すのはもう一生ないかもしれない。




あるとしても何年後かに、こんなこともあったねって懐かしむくらいなんだろうな。



そうなれたらいいな。







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