この恋は、きみの嘘からはじまった。
「走ろう」
琴乃の肩を抱き寄せて、少しでも濡れる面積を減らそうと試みる。
こんなときに限って屋根のある場所が少ない。
数年前に閉店してしまったおもちゃ屋の軒下に入る。
けっこう濡れた。
琴乃は?
チラッと視線を落とすと、シャツが濡れて肌に張り付いている。
シャツ越しに肌が透けていて、俺の鼓動はいっきに速くなる。
なんだこれ。
別に慣れてないわけじゃないのに、琴乃の肌となるとそれだけで緊張する。
これ以上見ると危ない気持ちになりそうだから、そっと琴乃から目を逸らす。
「すごく濡れちゃったね。
頭拭くよ?」
「え、待って」
琴乃がカバンからタオルを取り出し、俺の頭にそれをかぶせる。