Midnight danger signal.
家に帰り、ただいま。と短く挨拶をし、読書を始める。




家ではいつもこう。もうみんな慣れていて、母も父も、誰も咎めない。







読み始めたのは、今日借りた本。





『エルメス史 完全版』


という、普通の歴史本だ。






”完全版”というタイトルに疑問を感じるかもしれないが、(実際、ベンに「歴史のくせになんで不完全があるんだよ?」とつっこまれた。)


歴史とは、そういうものである。





それはただ単に、ベンが歴史の本当の姿を知らないだけ。きっと、学校で習う歴史は『諸説あり』などと書いてあるはず。





歴史は不完全。自殺した、と思われた人が、もしかしたら他殺なのかもしれない。あるいは、その時に死んだのは影武者かもしれない。そういうものなのだ。







…………なのに、なぜこの本は”完全版”なのか。





これは、エルメス中の考古学者、その他の学者さんたちがあらゆる方法を使って、『今わかるすべての本当のこと』を記した本なのだ。







だから、今日俺が行った『エルメス国立図書館』にしか、この本はない。








それを求めて、俺はあそこへ行ったのだ。








そう。気になったことがあるからだ。








『第752章 部族の衝突』







………その昔、このエルメス国には。ミミックとレイトという、二つの部族がいたと言われている。


対立に負けたレイトは、その後数年で滅びたと言われている。………が、



学校の歴史で少しかすったのが正しければ、消滅したはずのその部族、レイトの生き残りがいるかもしれない。




その真相を探るべく、この本を探しに行ったというわけだ。




まぁ、こんな本借りるのは俺くらいだから、もちろん誰にも借りられていなかった。(むしろ、俺がこれを持ってカウンターに行くと、館長までもが目を丸くしていた。)






…………さすがに、この本には『いる』とは載っていなかった。けど、その可能性があるかもしれない人は『いる』と。そして、レイトという部族の特徴は書いてあった。




………その1、幽霊のように真っ白な肌。




その2、金色の瞳。




その3。名前が二文字(がほとんど。)







たしかに、俺の学校に名前が二文字の生徒はほとんど居ない。いたとしても、肌はそこまで白くない。





………ほんとうに、そんなのがいるのだろうか。





そして、もう一つ。その本にはしたの方に、赤字で文章が書いてあった。







それは、







『真夜中零時から二時までの二時間、それはかつてレイトの活動時間だった。』




という、一文。




………つまりそれは、真夜中に外にでたら、出くわすかも知れない、という事だ。







「…………もし、出くわしてしまったら……」






今このエルメスに生きている人のほとんどは、かつてミミックだった人達であり、





レイトが消滅した原因は、ミミックたちがレイトを忌み嫌っていたからであって、





それはつまり、








俺は、彼らの『敵』になるというわけで、









もし、出くわしたら、出くわしてしまったら、






















………………俺は、無事なのだろうか。
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