【完】麗人、月の姫
world.1
不思議な夢
時折り、私はとても不思議な夢を見る。
『____………れ…………さ……』
金色に近い綺麗な男の人が、少し離れた場所で私に向かって微笑んでいたり。
切なそうに隣にいたり。
その人が悲しい顔をすると私までもが悲しくなるような気持ちに襲われて、起きたときには自然と涙が流れる。
そんな夢を見るようになったのは14歳になってからで、きっと情緒不安定な時期なんだってその頃は思っていたし、お母さんもそのぐらいの歳の子にはよくあることだって、言っていた。
「美麗(みれい)ー!紗綾(さあや)ちゃんが迎えに来てるわよ」
「あ、今行く!」
上にある部屋から、友達の紗綾が待つ玄関へ早足で向かう。
「紗綾ちゃんおはよう!いつもありがとうね」
「なに言ってるの(笑)あなたのお世話は私の役目でしょ♪」
須田紗綾(すだ さあや)ちゃんとは中学校で出会い、1年2年と同じクラスになった子で、席が近かったこともあり、直ぐに意気投合した友達だ。
紗綾ちゃんを知るにつれて家が近いことが発覚し、今ではこうして毎朝一緒に登校をしている。