【完】麗人、月の姫
月が隠れたその瞬間
「隠れた!!!!」
「真っ暗…………」
ついに隠れたその瞬間。
喜びと驚きが混じり合った感情。
そうこれが感動なのだろうか…………………。
しかし、それも数分すれば月が現れる。
「凄かったね……!」
「うん!一瞬にして辺りが真っ暗に………………あ」
その時、あの日学校で起こったことが頭にふと蘇った。
真っ暗で、怖くて、どうすることも出来なかったあのとき。
月路くんが来なかったら今頃どうなっていたのだろうか。
「美麗?どうしたの?」
「…………え?あ!何でもないよ」
そうだ!早く家に帰らないと!!
「あのね、紗綾!」
私が事情を説明しようと横を振り返ったとき、そこにいたのは紗綾じゃなく、あの日現れたアレに似ている黒ずくめのフード被った人だった。
________ニィ………ッ。
不気味な笑み。
一瞬にして背筋が凍りついた。
あれ………………………すぐさっきまで紗綾がいたはず…………。
嫌な予感がして下をゆっくりと見ると、そこには血塗れの紗綾が倒れていた。
「ひ…………………………っ!!!!」
目は視点が合っておらず、恐らく………………………………………………………死んでる。
なんで、今こんな事が起こってるのだろう………。なぜ、紗綾は死んでるのだろう………。
いきなり過ぎて追いつかない頭で必死に状況を把握する。
それでも理解できないでど、ただ分かることは、目の前のこの人は危険だってこと。
この間のあの人みたいに……………。
______ダッ…………!!
紗綾を地面に倒れたまま置いて行きたくはなかったけど、この場は逃げるしかなかった。
逃げないと次は私が殺られてしまう。
そう判断した結果だった。
後で必ず紗綾を連れ戻す……………。
そう心に決めて、今は必死に逃げる。
相手は幸いにも近くにあった太い木の枝に躓いた為、少しだが距離をあけることが出来た。
ここは、森に近い…………。そこに隠れればやり過ごせるかも。
そう思った私は一目散に森へ向かった。
そんな事をしているうちに、月は元の形へと戻っていく。
「はぁ……………はぁ…………っ」
靴が脱げようが、服が破けようが、今は関係ない。
逃げ抜くことが大事だ。
「……………痛っ!」
限界が来たのか、森に入ったところで足が痛み始めた。
「もうちょっとだけ、耐えて…………」
痛い足を引きずりながらも奥へと進んでいく。
よく見たら、変なものを踏んだのか足の裏から血が出てる…………………。
隠れれそうなとこで一旦足を休めよう。
そう考えた私は、茂みに隠れ、地面に腰をおろした。