【完】麗人、月の姫
これならいくら走っても大丈夫そう。
「やれば出来るじゃねーか。それにしても、今のはアイツの技に似てるな」
アイツ?
「そういえば合流する話はどうなったんだ?」
「上での合流に変更になりましたよ」
「そうか。アイツも逃げ切れてるといいが………。とにかく印を書け」
「はいはい〜」
幸斗さんはそう言うと地面に星型の印を袖から取り出した白いチョークらしきもので書いた。
_____カカッ………カカッ……………。
「よし、出来た。いつでも行けるよ」
「分かった。心の準備は出来たか?」
この町から離れるのかな……………。
生まれたときからここで過ごし、紗綾と仲良くなった町。
お母さんと過ごした大切な思い出のこもった町。
未練がないとったら嘘になるけど………………。
「大丈夫。行けるよ」
この町にはもう、大切にしてきた者たちはいない。
「そうか。なら始めろ」
「分かりました」
幸斗さんは蓮さんから指令を受けると、袖から腕を出し、どこからか取り出したカッターで腕を切った。
すると、その傷からツーっと血が流れ、印の上に落ちた。
_______っ!!!
下から私を囲むように溢れだした光たち。
その光は電気とは違う明るさをしており、どこか不思議な感じがする。
「今から行く場所はお前の故郷だ」
「私の故郷……………?」
上に吸い込まれていくような感覚。
急激な眠気に襲われどうしようもなくなった私は、身体の力が抜けるように、フッ………と眠りに落ちた。