【完】麗人、月の姫
取りあえず今把握したことは、ここは月の国で月の城と呼ばれる中にいるってこと。
「よっと……………わっ…」
立とうとするがふらついてしまい、まともに歩けない。
「あと少し……」
それでも壁をつたって障子を開けた。
______ガラガラ……っ。
少しひんやりとした空気が顔を撫でる。
『月』という未知な言葉で、私は宇宙的なものを想像していたが、その光景は私の想像はるかに神秘的なものだった。
「スゴい………………」
思わず呟く。
庭は和な感じで、池の上には石橋などがかかっていたり、庭師が綺麗に手入れをしているのか、中とは別に荒れていない庭。
空は透き通った水色のような色をしている。
太陽は出ていないのに、こんなにも明るい………………。
「あ…………っ」
_____ズルッ。
体を支える手が思わず滑り、バランスを崩す。
斜めに傾く体を誰かが腕で支えた。
「危ねぇな………気をつけろよ。………………ってお前は!!!」
「あ!」
その人は同じクラスの月路くんだった。
「何でお前がここに………!」
「月路くんだって、何でここに?」
………………あ、まさか蓮さんが言っていたアイツって……、月路くんのこと!?
確かにここの人ならば、あのときの不思議な出来事の話は繋がる………。
実際に傷を治すことが出来たのも、月路くんを真似したからだし。
「紹介するより先に会ってしまったようだな、透真」
「蓮兄」
「透真はその子の知り合いだったのかい?」
「幸兄まで……」
月路くんのそう呼ぶ方を見ると、蓮さんと幸斗さんが廊下を歩いていた。
「自己紹介が遅れた。俺は蓮。隣にいる白髪のコイツは幸斗だ」
改めて自己紹介されると、何だか気恥ずかしいな………。
「私は美麗と言います」
「覚えた。あと、そこのやつは透真だ」
「知っています………」
クラスメイトだったから………。
「まさか月路くんがこっちの人だとは思わなかった………」
「元々向こう側に行ったつもりはねぇよ。俺はここの視察として過ごしていただけ。姫を探すために」
姫……………そういえば幸斗さん達も言っていたよね。
「まだ私は何も知らない。ここの事も、何でこんな事が起きてしまったのかも」
「顔を見せる目的もあったが、一応それも教えに来たつもりだ。取りあえず、部屋に戻れ」
「無理は禁物ですよ」
幸斗さんの優しい笑みを見ると、心が安らぐ。
「ほら、戻るぞ」
月路くんな不服そうな顔をしつつも、私を抱え布団まで戻してくれた。