【完】麗人、月の姫
学校へ到着するとたくさんのクラスメイトと挨拶を交わす。
「おはよう、月乃(つきの)さん!」
「おはよう!」
「あ、今日の宿題やった!?やってたら見せてくれない?」
「いいよ!」
クラスメイトはみんな仲がよくて、気さくに話しかけてくれる。
……………………が、ただし1人を除いて。
「なぁ、アイツ全然言葉返してくれないんだぜ」
「転校してきたら仲良うなろうとして絡んでやってるのに、無口だしつまんねぇーやつだよな」
男子たちがそう話す相手。
それは、席で1人静かに本を読んでいる月路透真(つきじ とうま)くん。
地味な感じではないが大人しい性格らしく、いつも1人でああして本を読んでいる。
男子が話しかけても、冷たい態度で返すようだ。
「カッコイイのに、ちょっと近寄りがたいよね」
「分かる〜………俺に話しかけるなみたいな。まぁ、そこがいいんだけど♪」
しかし、そんなキャラが一部の女子の間では人気みたいだ。
そういえば、私も転校してきてから話していない。
「ん?まさか美麗アイツのこと気になるの!?」
「いや………そんなんじゃないよ。ただ、この中で唯一話したことないな……って」
「あ〜、私も話したことないや。でも、なんか冷たい人みたいね?話しかけて無視された人もいるみたい」
「へー………」
確かにさっきの男子たちも言っていたなぁ…………。
本当に噂通り冷たい人なのかな?
「…………知りもしないのに決めつけたらダメだよ」
そういえばお母さん、時折り私に言っていた。
『自分の目でみたありのままの真実を信じ、偽りの惑わされてはいけない』って。
「もう、美麗は優しいんだから!!!!そんなとこ好きよ!!!!」
「え!?……………あ、ありがとう……?」
もしかしたら、とても優しい人だったりして。
「あ…………」
そんなとき、チラリ……と月路くんと目があった。
本当に一瞬のことで、直ぐに本に目を戻したんだけど。
もしかしたらこっちの声、聞こえたのかも。
あ、でもそれなら男子の声も聞こえてるんじゃ………………。
「先生来ちゃった…………じゃね!」
「あ、うん」
もし、そうだとしたらどんな気持ちであの言葉を聞いていたのだろうか………。