【完】麗人、月の姫
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「それより、この城をどうにかしないとですね…………」
幸斗さんは周りを見渡すと、その現状に苦笑いをした。
「仕方ねぇよ。俺たちは所詮使者だ。そんな特別な力は持ち合わせていねぇ」
「なぁ、美麗」
「どうしたの?月路くん」
「……………その月路くんってのやめてくれない?あれは下で生きるための架空の苗字だし、ここでは透真って呼べ」
あれって、本当の苗字じゃなかったんだ……………。
「でも、いきなり言いかえるのってちょっと難しい…………」
慣れていないし……。
「言ってたら慣れる。それ以外は許さない」
…………………一応私主ですよね?
でも、確かに偽の苗字で呼び続けるのは、月路く…………いや透真くんに失礼だよね……………。
「透真くん」
「そう。言えば出来るじゃねぇか」
そう言うと透真くんは仏頂面からフッ……と、一瞬だけ笑った。………………気がした。
「お前の力でどうにかならねぇの?」
「私の力………?」
「前に古い書物で見たんだ。仮説だが、この城を良い状態に保たせているのは麗人ではないか………と。神の力がそうさせているのではないかって、書かれてあった」
……………つまり、麗人がこの城からいなくなったから、荒れ果てたのではないか、ということね。
「でも、正直私どうやって力を発動させたらいいのか分からなくて………」
やれるものなら、やりたいんだけど…………………。
「そうだな。まずは修行が必要だ」
「修行?」
神様にも修行とかあるんだ……。
「力を発揮するには、やはりそれなりの修行がいるものだ。神様もな、日々努力していることを忘れるな」
…………………知らなかった。
「修行すれば、私も力が操れるようになるのかな?」
「それはお前次第だ。それによっては使い物になると思う」
………………私の力が役に立つのなら。
「私、修行頑張ります!」
努力してみせる!!