【完】麗人、月の姫
対して透真くんも、先程までの服とは違い、町中にいそうな格好に着替えていた。
「さぁ、行くぞ」
私にそう声をかけると門から外へ出る。
初めての外の世界。
それだけで心が踊る。
「うわぁ…………」
外の世界は、私が思っていたよりも美しく、そして賑やかだった。
たくさんの家が並び、お店が並木道のように連なったショッピングロード。
「逸れるなよ」
透真くんがわざわざ私にそう言うくらい、人で溢れていた。
「魚はいかがー?新鮮だよー!」
「今日採れたての野菜だよー!」
皆かキラキラしていて、活気のある町。
「この町はいつもそうだ。己を見失わない。いつだって、互いに助け合い、盛り上げようとしてくれてる」
「ここだけは変わらないんだね」
時が流れようが、変わらない場所ってなんかいいなぁ。
だって、居場所だって思えるじゃん?
来たときに『また来たの?(笑)』って笑いかけてくれそうで。
この城の外には、こんなに暖かい町があったんだね………。
「ん?この店に入るの?」
透真くんの後をついて行っていると、ある店にたどり着いた。
少し和風な見た目で、のれんがかかっている。
これは______…………服屋?
_____ガラガラッ!
「はーい!いらっしゃいま___………あら!?透真くん!」
入るとまず現れたのは綺麗な女の人。
青色の和服を着ており、黒い髪も後ろで束ねている。
「お久しぶりです。寧楽(ねいら)さん」
「いつぶりかしらー?前はこんなに小さかったのにね(笑)」
そう言って柔らかく微笑む。
「いつの事言っているんですか…………それにそこまで小さくないです」
相変わらず透真くんは冷めているというか、冷静と言うか………………。
…………………あ。目があっちゃった。
「あら!?その子は!!??」
スゴく輝いた瞳で私を見てくる寧楽さん。
「あー、コイツは美麗。この国の姫だ」
こうサラッと言っちゃっていいのかな?
まぁ、減るものじゃないけど……………。
「何ですって!!??早く言いなさい!!無礼な口を聞いてしまい申し訳ございません…………」
「え…………いや、気にしないでくださいっ!普通で結構です!」
上の人に頭を下げられるの慣れていないから、戸惑うんだよなぁ。
「そう?………じゃあ、そうするわ!」
うんうん。その方が私的にも助かる♪
「ところでなぜ姫様をこの様な場所へ?」
「ん?あぁ、町の見学に来ていたんだ。ついでにここにも顔を出そうと思ってな」
「そう。あ、私の自己紹介はまだだったね!私は三日月寧楽(みかづき ねいら)。蓮の母です」
…………………あぁ!!!!!!
蓮さんのお母様か!!!
確か町にいるっていってたけど、ここなんだ………!
髪色や肌とかは似ているけど、雰囲気は全く違う…………親子でもやはり違うんだ。