【完】麗人、月の姫

夢の人








あれから随分と経った頃、透真くんと話していた宴会が執り行われた。


約束の1週間後には皆が忙しくて行えなったけど、こうして皆と食事が交わせる事だけで嬉しい。


城の中で1番広いとされる大広間にたくさんの豪華な食事が並ぶ。


「私はここの料理長を務めている斎木(さいき)と申します。姫様にご挨拶申し上げます」


私を見かけた人たちが挨拶にやって来る。


「いつも美味しい料理をありがとうございます。今後も宜しくお願いしますね」


「そのような言葉を言ってくださるなんて恐縮です………!」

表では接触がなかったが、陰ながらに接していた人。

いつも、私のお世話をしてくれてる人などでたくさん集まっている。

見たことのない顔がほとんどだ。


「姫様」

ある程度挨拶の波が去ったと思ったら、次は体格の良い厳つい感じの男の人が話しかけてきた。


この人も見たことないから、裏で頑張っている人かな?


「遅くなりまして申し訳ありません。私はここの護衛隊長を勤めている希薄(きはく)と申します」


そう言うと、完璧なお辞儀を私にした。

…………………って、ここの護衛隊長ということは、蓮さんのお父さん!!??

この人が!?


綺麗な感じの蓮さんに似ておらず、何というか…………少しゴツい感じの人。


「…………ハハッ!似ていないでしょう?(笑)」

「あ………いえ。その………………すいません…」


「良いんですよ。よく、言われるんです」

そう言って、豪快に笑ってくれる希薄さんはとてもいい人そうだ。

希薄さんと他愛のない話で盛り上がっていると、近くからあの人の声が聞こえてきた。


「親父楽しそうだな」

「よぉ、蓮!今来たのか?」

さっきまで仕事をしていたのだろうか?

スゴく疲れた様子の蓮さんが現れた。


「あぁ」

そう言えば蓮さんを見たのは久しぶりのような気がする…………。


透真くんとは修行でいつも会ってるし、幸斗さんはたまに顔を覗かせてくれていた。


唯一蓮さんとは最近まともに話していない。

「蓮、やっと来たのかい!?」

蓮さんを見かけて幸斗さんが遠くからやってきた。

「来ただけマシだ」

「そうだけども……………姫様の前でそれはないでしょう?」

私は気にしてないんだけど………………それより、連さんの疲れっぷりの方が気になる。


別に部屋で休んでても構わなかったのに…………。


「取りあえずお前に会ったんだ。この蓮、姫様に挨拶申し上げます」

急にそんなかしこまられると変な気分……………。


しかも蓮さんに頭を下げられるなんて。

「顔を出したんならついでに皆に挨拶するといい」

「……………分かった」

そう言うと蓮さんは賑やかな場所へと行ってしまった。



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