【完】麗人、月の姫
カーテンも閉まっており闇に包まれた理科室。
「……………そうだ!!電気!!!!」
近くにあるボタンに手を触れようとしたとき、教壇の方から声が聞こえた。
「陽光美麗(ひかりび みれい)さん」
「せ……………先生!!」
さっきまではいなかったはずなのに、気づくとそこに先生がいた。
思わず触れていた手を離す。
「先生………何で私は呼び出されたのですか?」
俯き顔の見えない先生に遠くからそう声をかける。
「近くに来て言ってくれないかい?」
「……………………何でですか?」
「ここからじゃ難しいなぁ……………」
「何が…………ですか?」
暗いせいか、変な雰囲気を醸し出す理科の先生。
いつもの様子と何だか変だ。
「仕方ない。こちらからそっちへ行こう」
______カツ…………カツ…………カツ…………。
ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
顔を上げた瞬間、先生の目は視点があっておらず、恐怖をそそる顔をしていた。
______逃げないとヤバい!!!
私の本能がそう言ってる。
だけど、ドアは開かない。
暗いと見えないから電気をつけようと、ボタンをオンにするが、電気はつかず、まるで電池切れの電球のようだ。
「つかない………っ!!??なんで…………」
そうしている内に、着々と先生はこちらへ近づいてくる。
_____ダッ!!!
このままじゃここまで来られてしまうと察した私は、必死に遠くへ走る。
と言っても教室の中だが…………。
カーテンの開こうとするが、鉄のように固く、全く動く気配がない。
「い………や!!!なんて………!?」
この状況自体、非現実のような光景で、ただ私は逃げ回ることしか出来なかった。
「……つかまえ……た」
「いや!!!!離して下さい!!!!」
徐々に逃げ道をなくされ逃げ場のなくなった私は、ついに腕を掴まれてしまった。
「先生………止めてください」
そこには優しい先生の面影はなく、不気味な笑みを浮かべる怖い人がいた。
「近づけば微量に感じるこの匂い…………………。やはりコイツは……………」
匂い!?
「……………コイツを上に持っていけば……………」
そう言ったと思ったら、先生の中から黒いモヤのような物が出てきて、別の人の形になった。
フードで顔が見えない……………………。
中から出ていったからか、先生は力なくその場に倒れた。
「先生____……………っ!!!」
私も思わずその場にしゃがみ込む。
動脈は動いてる……………命に別状はなさそうだ。
「お前を捕らえる」
「捕らえる…………て?」
「知らないのは好都合だ」
マントの中から私には向かって手が伸ばされる。
「いや…………っ!!!」
必死にその場から逃げる。
「逃さない………」
その人は人の体とは思えないほど、機敏だった。
「いや………!!!」
直ぐさま捕まる。
「見つけ出すのに時間がかかってしまった」
「なぜ、このようなことをするのですか?私を掴ませて売る気ですか!?」
「売る?…………………………まぁ、そんなものかな(笑)今から行くところは君が思っているものよりずっと残酷なとこだ」
……………………残酷……な?
「そうだ。連絡しなければな」
男は携帯のような物を取り出すと、電波を出そうとアンテナを立てる。
もう。ダメだ………。
私がそう思ったとき。