【完】麗人、月の姫
World.3
疑うこと。知ること
【side陰国】
あの会談で俺があの賭けに承諾したのは、麗国を攻める口実が出来るからだ。
何もないまま攻めても、ただ名が汚れてしまう。
それなら、賭けで向こうに落ち度があったうえで攻めた方が、より向こうを精神的にも追い詰めれると思った。
それにしても、変なことを言っていたな。
側近が父上を殺害しただとか……………………。そんなことはあり得ない。
あり得ないが、まぁ確認程度に観察してもいいか。
普段はこの部屋から出ないが、使用人のことを知ることも必要だ。
俺はそう考えると部屋を静かに出た。
溢れだす力でバレる可能性もある為、力を押し殺し隠す。
これで、普段の使用人の姿が見れるはずだ。
「……………………です…………」
会議室で何やら話が聞こえる。
恐る恐る少しだけ開いていたドアの隙間から中を覗き込むと、中には古くから使えるあの側近と、他の幹部達が何やら話し合っていた。
恐らく政治に関することだろう。
いつもの事だと思いつつ、その場を離れた。
いや、離れようとしたとき______……………。
「貴方様は本当恐ろしいですね………(笑)王様の側に居ながらそんな野望を抱えているだなんて」
「我らの長年考えていたことが、もう目の前まで来てるのだ。手段は選べないさ」
「またあの時のように麗国に罪をなすりつけるのですか?」
「そうだな。こちらから王様の指示と言うことで、城へ攻め込む。そして、勝ったあとはここの王も暗殺する。それを、麗人が腹いせでしたんだと言い、周りの神を味方につけよう……(笑)」
「そういえば前国王を殺害したのは貴方様でしたね。今回も頼みますよ」
「大丈夫です。王は私を警戒していない。簡単に成し遂げれます」
その話は実にショックで残酷だった。