【完】麗人、月の姫
World.3

疑うこと。知ること




【side陰国】


あの会談で俺があの賭けに承諾したのは、麗国を攻める口実が出来るからだ。


何もないまま攻めても、ただ名が汚れてしまう。


それなら、賭けで向こうに落ち度があったうえで攻めた方が、より向こうを精神的にも追い詰めれると思った。


それにしても、変なことを言っていたな。


側近が父上を殺害しただとか……………………。そんなことはあり得ない。


あり得ないが、まぁ確認程度に観察してもいいか。


普段はこの部屋から出ないが、使用人のことを知ることも必要だ。


俺はそう考えると部屋を静かに出た。

溢れだす力でバレる可能性もある為、力を押し殺し隠す。

これで、普段の使用人の姿が見れるはずだ。


「……………………です…………」


会議室で何やら話が聞こえる。

恐る恐る少しだけ開いていたドアの隙間から中を覗き込むと、中には古くから使えるあの側近と、他の幹部達が何やら話し合っていた。

恐らく政治に関することだろう。


いつもの事だと思いつつ、その場を離れた。


いや、離れようとしたとき______……………。


「貴方様は本当恐ろしいですね………(笑)王様の側に居ながらそんな野望を抱えているだなんて」

「我らの長年考えていたことが、もう目の前まで来てるのだ。手段は選べないさ」

「またあの時のように麗国に罪をなすりつけるのですか?」


「そうだな。こちらから王様の指示と言うことで、城へ攻め込む。そして、勝ったあとはここの王も暗殺する。それを、麗人が腹いせでしたんだと言い、周りの神を味方につけよう……(笑)」


「そういえば前国王を殺害したのは貴方様でしたね。今回も頼みますよ」

「大丈夫です。王は私を警戒していない。簡単に成し遂げれます」



その話は実にショックで残酷だった。




< 75 / 86 >

この作品をシェア

pagetop