【完】麗人、月の姫
【side透真】
あれから随分と経った。
「本当によかったの?」
「何がですか?」
「姫様だよ」
美麗に術で眠らせたあと、記憶を奪い取った。
俺に関すること、ここに関すること、そして前の死んでしまった家族や友達に関すること全部。
「アイツは元の場所に戻るべきだ。そして、俺らの事も忘れるべきだ」
「…………………本当にそう思ってるの?」
「何かがですか?」
「本当は辛いんじゃないの?」
辛い?俺が?
「忘れさせて次の道を進ませる気なんだろうけど、それで相手は忘れること出来ても、透真は忘れることが出来ないんじゃないかな」
「何が言いたいんですか」
「正直になりなさい。透真はこのままで本当によかったの?相手の幸せもそうだけど、透真の幸せは?思いはどうなるの?」
……………………そんなまるで俺が、「アイツの事が好きみたいな言い方じゃないですか……」。
「え?違うの?」
幸にぃは驚いた顔をした。
「違いますよ!!!ただちょっと寂しいなって…………………。あ!いや、そんな事思っていないですよ!!」
何言ってんだ、俺は。
「………ふふっ。分かりやすい子だ(笑)まぁ、今はそんな事はいいか。寂しいなって思うのなら迎えに行けば?」
何言ってんだよ!幸にぃは……………!!!
「僕もまた姫には会いたかったところだし♪それに、透真はこのまま一緒会えなくなって本当にいいのかなって」
………………………そりゃ…………嫌だし。
なんか、知らねぇどアイツが居ないのは心が沈む。
「ほら。行ってきなさい。迎えに言ってあげな。あとは、姫が決めることだしね」
…………………くそっ!!
「ちゃんと記憶を戻してあげなよー?」
そんな事言われなくてもするし。