記憶の中の記憶
対向斜線をはみ出しながら、こちらへ向かってくるトラックに、警戒心を強めていた。

『こっちへ来なきゃいいんだけど……』

良人がそう言って、車のスピードを遅くした時だ。

トラックの運転手が、ハンドルに覆い被さっているのが、はっきり見えた。


『危ない!良人!!』

そしてトラックは、真っ直ぐに、私達の車に向かってくる。

慌てた良人は、その場に車を停めた。

『珠姫!車の外に出ろ!』

シートベルトを外して、急いで助手席のドアを開けた。

『良人!』

振り返った良人は、シートベルトが外れなくて、焦っている。

『良人!落ち着いて!』

『いいから、早く逃げろ!珠姫!』

その時目の前に、トラックが突っ込んでくるのが、見えた。
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