記憶の中の記憶
「……連絡くれたのは、母さんだろ。」

「そうだけど、返事も全くないし。全然来ないから、今日は仕事が忙しくて、来れないと思ったのよ。」

最もな意見を言って、その場を誤魔化したお母さん。

でもそれが、私の前での建前であることは、良人からそれとなく、聞いていた。


『賢人はね。双子でありながら、俺とは真逆に育てられたんだ。』

『真逆?』

社会人に成り立ての時。

夏休みに賢人が帰ってくると、嬉しそうに語る良人が、ふいに、そんな事を話し始めた。

『ああ。俺は小さい頃、体が弱くてね。しょっちゅう病気ばかりしていたんだ。』

『えー!今の良人からは、想像できないわ。』

少なくても、私と付き合ってからの良人は、全く病気なんてしてなかった。

風邪をひいた時でさえ、薬も飲まずに、いつの間にか治してしまう程だった。
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