記憶の中の記憶
賢人の背中を追いかけながら、もう一度病室へ入った。

ベッドに横たわっている良人は、苦しそうに呼吸をしている。

恐る恐る、良人に近づく賢人。

声を掛ける前に、賢人に気づいた良人は、ゆっくりと目を開けた。

「やあ、賢人……ようやく……会えたな。」

「良人。ごめん、すぐ来れなくて。」

「いい……んだ……。」

呼吸が苦しそうなのに、それでも賢人には、笑顔を見せる良人。

そこには、私もご両親も入れない。

二人の世界があった。


「はぁ……はぁ……」

目に見えて呼吸が苦しくなった良人の、側に私は寄り添った。

「良人。無理しないで。」

「今日は……ここ……まで……みたいだ……」

「また明日があるわ。」

私は良人の額を撫でた。


それを見たご両親は、私と良人の仲の良さを再発見したのか、とても和やかな雰囲気になっていた。
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