記憶の中の記憶
「どうしました?津山さん、市田さん。」

リハビリのトレーナーが、駆けつけてくれた。

「すみません、何でもありません。」

私はトレーナーに、頭を下げた。

「そうですか。もう少しで、他の患者さんのリハビリ終わりますんで。そうしたら、津山さんのところへ来ますね。」

「お願いします。」

トレーナーは、良人の肩を軽く叩いて、他の患者さんの元へ、戻っていってしまった。


「良人。イライラするのは分かるけれど、大きな声を出すのだけは止めて。」

「何が分かるって言うの?自分の彼女を、寝取られた男の気持ち?」

「はあ?いい加減にしてよ、良人。」

「ほら、やっぱり否定しない。」

大きな声が、出そうになったけれど、周りの患者さんの姿を見て、グッと我慢した。



「寝たんだ。賢人と。」
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