記憶の中の記憶
次の瞬間、私は良人の頬を、思いっきり叩いていた。


「市田さん。」

またトレーナーが、走ってくる。

「はぁはぁはぁ……」

私は涙を流しながら、良人の膝元に、倒れ込んだ。

「なんで?どうして?そんな事しか、考えられないの?」

「なんで?男と女なんて、所詮そんなモノだろ。」

「違う!」

私は息を切らしながら、頭を大きく振った。


「賢人は……私に指1本、触れなかった。」

良人は、口を開かず黙り込む。

「賢人は、そんな人じゃない!」


賢人は……

賢人は、

賢人は!


ただただ、私の側にいて。

心と心で、愛してくれた。


そう、私を愛してくれたんだ。



「……っ」

今さら賢人の事が、恋しくて恋しくたまらない。

「うゎあああああ!!」
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