記憶の中の記憶
それからも、私は良人のリハビリに、付き添う事を止める事はなかった。

今になって、賢人への想いに気づいたって遅いだけ。

私は、良人と婚約しているんだもの。

それを断って、双子の賢人の元へなんて、行ける訳がない。


「良人。夕食きたよ。」

「ああ。」

良人も、あれ以来。

賢人の名前を、口にする事はなかった。

「ええー!今日、カレーなの?病院食なのに、贅沢じゃない?」

「だって俺、まだ歩けないだけで、他は健康だもん。」

そう。

あれだけの大ケガをして、人工呼吸器を1ヶ月も着けていたのにも関わらず、良人の体の回復は、とても早かった。

良人のお父さんとお母さんは、『珠姫さんがいると、違うのね。』と、喜んでいた。

「美味しい?カレー。」

「んー。でも、珠姫の作るカレーの方が、美味しいかも。」
< 132 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop