記憶の中の記憶
「良人の足は、一生治らないんでしょうか。」
トレーナーは、周囲を見渡すと、リハビリ室から少し離れた場所に、私を連れて来た。
「津山さんは、何と仰っていたんですか。」
「良人は、もう治らないって……」
小さく何度も頷いて、トレーナーは口を開いた。
「一生歩けない訳ではないと、思います。熱心にリハビリに励んでいらっしゃいますし、努力次第では、事故前と同じように、車椅子無しでも、生活できるようになると思います。」
「それじゃあ……」
良人の、思い違いなんですねと、言いかけた時だった。
「ただ……」
「ただ?」
「時間は、かなりかかると思います。車椅子は必要なくなると思いますが、杖は欠かせないでしょうね。」
私は息を大きく吸って、そのまま吐く事を、忘れてしまったかのように、その場に立ち尽くした。
トレーナーは、周囲を見渡すと、リハビリ室から少し離れた場所に、私を連れて来た。
「津山さんは、何と仰っていたんですか。」
「良人は、もう治らないって……」
小さく何度も頷いて、トレーナーは口を開いた。
「一生歩けない訳ではないと、思います。熱心にリハビリに励んでいらっしゃいますし、努力次第では、事故前と同じように、車椅子無しでも、生活できるようになると思います。」
「それじゃあ……」
良人の、思い違いなんですねと、言いかけた時だった。
「ただ……」
「ただ?」
「時間は、かなりかかると思います。車椅子は必要なくなると思いますが、杖は欠かせないでしょうね。」
私は息を大きく吸って、そのまま吐く事を、忘れてしまったかのように、その場に立ち尽くした。