記憶の中の記憶
一向に訪れない家族に、何か事情があるのだと、漠然と思っていたのに。


その答えが、“家族は誰もいない”だったなんて。


「どうして、教えてくれなかったの?」

「だって今の珠姫には、きっと耐えられないよ。」

賢人の言葉で、私の心は更に弱くなる。


「珠姫。少し自分の事を聞いたりする事、止めた方がいいんじゃないかな。」

「どうして?」

「今の珠姫。自分の事何一つ思い出せてないのに、あまりにも、他人から入ってくる情報量が多すぎる。」

「だから?」

「自分の事なのに、自分は知らない。その情報を処理できる?」

「……できない。」

「でしょう?珠姫を見ていれば、分かるよ。」

私は顔をおさえた。


賢人の言う通り。

他人から聞く“自分”に、私は付いていく事ができない。
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