記憶の中の記憶
賢人は、大変なこの状況でさえ、楽しもうと努力する人。

私みたいに、嘆いたり落ち込んだりする部分を、人に見せたりしない人。

こんな私には、賢人のようにポジティブな人が、必要なんだと思う。


「ねえ、賢人。」

「ん?僕にその髪を、預ける気になった?」

賢人の冗談にも、私は救われている。

「朝と夜、逆にするって言うのは?」

「逆?朝、珠姫が自分で病院に行くの?」

「そう。お昼頃に行けば、どんなに遅くなったって、夕方にはリハビリは終わるわ。それなら、賢人の仕事が終わって、迎えに来てくれるまで待っていられるし。そのお礼に、夕食は私が作るね。」

賢人は、少しはにかんでいた。

「夕食付きとは、考えたね。」

「でしょう?それなら、賢人は私の家で、ゆっくりしていけるわ。」
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