記憶の中の記憶
「ねえ、賢人。車、買い替えた?」

「えっ?いや?」

私は、勢いよく振り返った。

「どうして?」

「あっ……ううん。大家さんが、前は白い車だって、言ってたから。」

「なんだ。そんな事か。」

賢人はミラーを見ながら、、右へ曲がる。

「白い車も持っているけど、事故の時に乗ってたから、修理に出してるんだ。」

「修理……この車は、代車?」

「いや、僕のだよ。」

「賢人、車2台持っているの?」

「僕は1台だけど、家にもう1台あるから。」

賢人は、手慣れた手つきで、スーパーまでの道を走る。


「なぜ……事故の時は、白い車にしたの?」

「坂道を走るから。こっちは古いから。」

淡々と私の質問に答える賢人。

そこには、何の疑いの余地もなかった。
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