記憶の中の記憶
次の日。

私は先生に言われた通り、いろいろな検査を受けた。

「脳の損傷も見当たりませんし。出血もしていないようです。記憶がないのは、一時的なものかもしれませんね。」

主治医の先生は、ベッドに横たわる私に、そう告げた。

「勿論、上半身打撲に、両足の骨折ですから、長期入院して頂き、治療とリハビリを行って頂きます。その間に思い出すかもしれませんし、もし思い出さなかったとしても、焦る必要はありません。」

そう言って先生達は、病室を出て行った。


「珠姫。何も心配する必要はないよ。入院手続きだってしたし。あっ、そうだ。保険会社にも連絡しないと。」

彼は、今日も私の側に、いてくれる。

「賢人。」
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