記憶の中の記憶
生活費は、医療保険や傷病手当てで、なんとか生活していけているけれど、いつまでもこんな生活、続けていいわけがない。

“焦らないで”


賢人や主治医の先生に、必ず言われる言葉。

頭では分かっているのだけど、心の奥が“早く!早く、大事な事を思い出して!”と、叫んでいる気がする。

「痛っ!」

また、頭が痛くなる。

静かに目を閉じるけれど、今度は何も見えない。

「あ~~!」

イラついて、ソファに横になった。

直ぐに痛みは収まったけれど、何も思い出さない頭痛は、本当に勘弁してほしい。


天井を見ると、光っている蛍光灯が、やけに大きく見えた。

今日は朝から少し雲っていて、暗いと目が悪くなるよと、賢人が朝、電気をつけたのだ。

「だけど、私一人だからいっか。」
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