記憶の中の記憶
「あっ、これかも。」

見つけたと思って、伸ばした先には、輪ゴムで束ねられていた写真の束が、いくつかあった。

「なに、これ……」

恐る恐るその写真を手に取ると、やはり温泉に行った時の写真だ。

「どうしてここに?捨てたって、言ってたのに。」

輪ゴムを外して、一枚一枚、その写真を見ていく。


そして、私は今までになかった程の、違和感を抱いた。

旅館で撮った写真。

そこに一緒に写っているのは……





「違う……賢人じゃない。」


賢人によく似ているけれど、違う人だ。

次を捲っても、やはり賢人によく似た、違う人。

「どういう……こと?」

私は錯覚を見ているんだろうか。


その時、家の電話が鳴った。

「誰?」

ビクビクしながら、電話機のディスプレイを見た。

それは、賢人の実家からの電話だった。
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