記憶の中の記憶
「はい……」

『ああ、珠姫さん?』

「……そうです。」

声の主は、賢人のお母さんだった。

『賢人、そっちへ行っていない?』

「いえ……今、仕事だと思います。」

『仕事?』

私の答え方が不味かったのか、賢人のお母さんは、黙ったままだ。

『あの子、今お友達の家に泊まっているって言ってたけれど、どのお友だちか、珠姫さん分かる?』


友達の家?

婚約者だと言うのに、友達の家に行くと、言っていたの?


『珠姫さん?』

「すみません。どのお友達か、検討がつかなくて。」

『そう。』

とても慌てている様子がした。

「あの、お急ぎでしたら、私からも賢人に連絡してみましょうか?」

私の心臓が、勝手に早くなった。

『そうね。お願いできないかしら。』

「はい。それで、何があったんですか?」

『あのね、』
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