ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
「ただいまー」

ソファでテレビを見ていると楓摩の声がした。

重い体を起こして玄関まで迎えにいく。

「おかえり、楓摩。お疲れ様。」

そう言って、いつも通り楓摩からカバンを受け取ろうとする。

すると

「あ、いいよ。カバンくらい自分で持つよ。それより、体辛いなら休んでて。」

そう言って、ニコッと笑って頭をポンポンと撫でてくれた。

そんな楓摩の優しさを嬉しく思い、コクンと頷いて、それからソファに戻った。

少しすると、楓摩はスーツから部屋着に着替え、それから私の隣に腰をかけた。

「朱鳥、今日はどうだった?ご飯、食べれた?」

そう聞く楓摩に、私は小さく首を横に振る。

「…食べたけど、吐いちゃった。……栄養、つけないといけないのはわかってるんだけど、気持ち悪くて……」

そう言うと楓摩は、また優しく頭を撫でてくれた。

「そっか。辛かったね。じゃあ、また点滴しよっか。」

私は小さく頷いた。

楓摩は、私を抱っこして寝室に連れて行ってくれる。

それから、ベッドに私を寝かせて、点滴の準備を始めた。

「じゃあ、チクッとするからね」

手の甲に点滴の針を刺され、それから、固定用のテープを貼られる。

「よし、おっけー。じゃあ、後は安静にしてようね。」

そう言って、楓摩は私の手をギュッと握ってくれた。

「…ありがと」

私がそう言うと楓摩は嬉しそうに微笑み

「いーえ。これも、全部俺たちの赤ちゃんと朱鳥のためだからね。俺には、朱鳥の辛さとかわからないからさ、このくらいなんてこと無いよ。」

それから、楓摩は、また私の頭を撫でてくれた。

楓摩に頭を撫でられる時、私はとても幸せな気持ちになれた。

「じゃあ、もう寝な。朱鳥が寝るまでここにいてあげるから。」

コクン

私はそう頷いて、目をつぶった。
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