ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
その後、医局へ戻ると、そこには案の定、大きなクマが出来て、落ち込んだ様子の楓摩がいた。

"楓摩には言わないで"

朱鳥ちゃんのその言葉を思い出して、口を噤む。

……でも、俺には…落ち込んでいる楓摩に声をかけずにはいられなかった……

「楓摩、どうした?」

本当は理由を知っているけど知らないふりをする。

「陽向……」

楓摩の、光の宿っていない目を見ると、胸を鷲掴みにされたような感じがした。

「どうした、楓摩。そんなに落ち込んで…。また…………朱鳥ちゃん…か……?」

そう言って、楓摩の背中をそっと撫でてあげる。

すると、楓摩は、小さくコクンと頷いた。

頷いた瞬間、楓摩の目からは涙がこぼれる。

「どうした、何があった?」

「……陽向…陽向……………………俺、どうしよう………俺、朱鳥が居ないと…生きていけない……」

楓摩は、そう言って、無の表情で涙を流し続けた。

どこを見ているのかもわからないような、真っ黒な瞳。

ポカンと開いた口。

困ったように下がる眉。

……その表情は、楓摩の心情をハッキリと表していた。
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