ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
「…………ぅま……楓摩…」

朱鳥の声にハッとする。

朱鳥の方を見ると、朱鳥は微かに目を開けている。

「……ふ………ま…ふぅ……ま……」

朱鳥はそう、何度も何度も俺の名前を呼んでは、静かにスーッと涙を流す。

「朱鳥、大丈夫だよ。俺は、ここにいるから」

そう言って、朱鳥の手を包み込むように握ると、朱鳥は少しだけ落ち着いたような表情になった。

「楓摩……」

「大丈夫、いるよ。頑張れ…これを乗り越えたら、あと少しだからね……頑張れ…頑張れ……」

俺は、目からパタパタと涙を落とした。

朱鳥の目は、まだ虚ろだ。

やっぱり、久翔が言った通り、意識が混濁しているみたい…

病気が……進んでいる証拠。

俺は、その日何度も何度も朱鳥に呼びかけて、涙を流した。

とても、静かな夜だった。
< 154 / 418 >

この作品をシェア

pagetop