ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
「ちょっと、慣れたかな?少し、本格的な話に移ってもいい?」

……コクン

「ありがとう。まあ、でもリラックスしていいからね。まずは、昔の話聞いてもいい?辛かったら、無理しなくていいから、ダメって言ってね。」

コクン

少し緊張気味な朱鳥の手をそっと握ってあげる。

「大丈夫だよ」

そう小声で言うと、朱鳥はコクンともう一度頷いた。

「じゃあ、ちょっとずつ聞いていくね。まずは、おじさん?にどんなことされてたか教えてくれるかな?」

「………………」

「言うの、辛い?我慢はしなくていいよ。」

「……大丈夫…です。」

「そっか、ありがとう」

「………………おじさん、には……沢山痛いこと…されました………殴られ…たり……蹴られたり…………嫌なこといっぱい言われて……それで…」

「うんうん」

たどたどしく、話す朱鳥。

もしかすると、おじさんにやられたことを思い出して、少し怖くなっているのかもしれない。

握られた手に少し力が入っている。

「……あとは…ご飯、食べさせてもらえなかったり……………酷い時は……切りつけられたり…いっぱい怒られて……怖くて…………」

その辺から、少し朱鳥の呼吸が荒くなっていく。

「そっか、そっか。ごめんね、思い出しちゃったかな、苦しいね。泣くのは我慢しなくていいよ。好きなだけ泣いていいからね。」

朱鳥の背中をそっとさすってあげると、朱鳥は両手を顔に当てて、嗚咽をこぼしながら、泣き始めてしまった。

「そっか、そんな辛い生活が何年も続いたの?」

コクン

「何年くらい?」

「…………10年…くらい」

北斗は朱鳥の言ったことを、全て欠かさずメモに書いて、優しく相槌を打ちながら、話を続ける。

「10年か……、よく、そんなに辛いの独りで我慢してたね。偉いね。俺なら、多分もっと早くリタイアしちゃうな」

コクン

「それで、その後楓摩と会って、少し収まってたけど、最近、また昔の辛いこと思い出しちゃうって感じかな?」

コクン

「うん、わかった。ありがとうね。ごめんね、いっぱい聞いちゃって。」

コクン

「辛いね…嫌だね……怖いよね…」

コクン

「でもね、もう怖い人はいないんだよ。朱鳥ちゃんのこと傷つける人は一人もいないからね。」

コクン

「うん。じゃあ、今日はここまでにしようか。1日目だから疲れたでしょ?今度は来週あたりにしよっか。」

コクン

話が昔の話題から逸れるにつれ、朱鳥は少しずつ泣き止んでいった。

「今日は、お話してくれてありがとうね。また、来週、宜しくね」

コクン

そう言って、北斗が帰っていくと、朱鳥は俺にハグをねだってきた。

「お疲れ様、朱鳥。」

俺は、そう言って朱鳥を抱きしめてあげた。
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