ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
クリニックに着くと、小さな部屋のソファに降ろされた。

「ちょっと待ってて、今、暖かいタオルとか持ってくるからね。」

そう言って、私はその小さな部屋にひとりになる。

なんとなく、1人なのが寂しくて、私はソファにあったクッションを抱きしめた。






「お待たせ。これ、暖かいタオル。これで、目のところ温めてみて。泣いたままにしておくと、腫れちゃうから。あと、はい、これ。ホットミルク作ったけど飲む?」

「……りがと…………ざいます」

北斗先生の気遣いが嬉しくて、お礼を言ったつもりだけど、さっきからの震えで、うまく言えなかった。

「ソファ、お隣に座ってもいい?」

コクン

「ありがとう」

そう言うと、先生は、私の隣に座って、背中を優しくさすってくれた。

「途中まで、ちゃんと来てくれてたんだね。ありがとう。」

「……でも、ちゃんと、ここまでは…来れなかった」

「えー、でも、カウンセリングの約束してても、家から出てきてくれない患者さんも多いんだよ?だから、朱鳥さんは途中まで来てくれただけ、偉いよ。頑張ったね」

……コクン

「途中で、やっぱり怖くなっちゃった?」

「…………マンション、出たところで…知らないおじいさん、多分近所の人だけど……に話しかけられて…私、びっくりしちゃって…………ちょっと焦っちゃって…パニックになりそうだったから……その場を離れたの…」

「うん。」

「……そしたら、"無視かよ"って言われて…私、ごめんなさいって思いながら歩いてたら、だんだん人も増えてきて、息、苦しくなってきて……涙も出てきて…ジロジロ見られて、それが嫌で…怖くて…………なんか、フラフラしてきたから、あそこに座っちゃった…」

「そっか。無視したくて、したわけじゃないのにね。勘違いされちゃったのか。それで、ちょっと取り乱しちゃったんだね。」

コクン

「そっか、そっか。でも、良かった。事件に巻き込まれたのかと思っちゃった。ちゃんと、来てくれて安心したよ。」

コクン

なんか、先生に話しを聞いてもらえばもらうほどに、涙が出てくる。

「少し安心できたかな?全然、泣いていいからね。」

コクン

頷いてから、貰ったホットミルクを飲むと、なんか、暖かくて、また涙が出てくる。

「大丈夫だよ。大丈夫。怖かったけど頑張ったね。偉い偉い。」

コクン
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