ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
それから数日後

朱鳥は熱がだいぶ下がり退院出来ることになった。

……だけど、問題がひとつ。

家に帰ったことで、"自分はきちんと家事や子育てをしないといけない" "こんなこともちゃんと出来ない自分はダメだ"

そう、朱鳥は思ってしまうらしい。

病み上がりで、すぐに家事も子育ても沢山できるわけがないのに、"やらなきゃ"という朱鳥の真面目さからストレスを感じているようだった。

葉月と柚月も、最近はイヤイヤ期になりつつあり、ワガママを言う頻度も増えてきて、朱鳥はそれに答えてあげられない自分を攻めていた。

俺は、そんなことない…と伝えたけど、そんなに子育てに真面目になるには、理由があった。

それは、朱鳥の過去

朱鳥は、実の親に愛された記憶も、里親に愛された記憶もほんの少ししかない。

というか、ほぼない。

虐待を受けていた過去が大きすぎた。

だから、自分でも子供にどう接していいのかわからないようで、葉月と柚月がワガママを言っても、それを叶えてあげることが最善だと思っているっぽい。

叱るのは、葉月と柚月に自分の過去と同じ経験をさせてしまうのではないか……と怖くて出来ないみたいだ。

けど、あまりに無理な要求をされると、今度は逆に困って、"どうしよう"と軽くパニックになっているのを何度か見かけた。

「無理な要求は叶えてあげなくていいんだよ。無理なことは無理って教えてあげなきゃ」

そう言うと、少し落ち着くけど、でも愛し方を知らないのは少し問題だった。
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