ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐

楓摩side2

「ただいま!!」

急いで家に帰ってくる。

今日は、少し朱鳥のことで手が離せなさそうなので葉月と柚月には悪いけど、夜間保育園に送ってきた。

家に入るやいなや、焦り気味の北斗が小走りで出てくる。

「楓摩、ちょっと朱鳥ちゃん熱高いかも。嫌がって計らせてくれないんだけど、顔真っ赤だし、辛そうで……」

「何時から?」

「30分くらい前。夕飯にお粥食べさせたんだけど、その辺からぐったりしてて」

「了解」

俺は、スーツを急いで脱いで、朱鳥のいるリビングへ駆けつけた。

ソファには北斗の言ってた通り、顔を赤くし、ぐったりした様子の朱鳥。

「朱鳥、ただいま。」

そう言って少し肩を叩く。

「……ん、楓摩…」

朱鳥は今にも泣き出しそうな顔で俺にヨロヨロと抱きついた。

「よしよし。……あー、たしかに熱いね。朱鳥、お熱出ちゃったの?辛いんじゃない?」

「んー、熱ない…!!だいじょぶだもん!!」

というけど、明らかに熱がある。

俺の感では39度はある。

朱鳥に気付かれないようにそっと体温計を取り出して、サッと脇に挟み、そのまま朱鳥を抱っこするように固定する。

「んーん、熱ない!!だいじょぶなの!!げんきなの~!!」

朱鳥はとうとう涙を零し始める。

自分の心を守るために幼児退行し、それでもさらに我慢しようとする朱鳥の姿を見て、とても辛くなる。

ピピピピピッ♪

ピピピピピッ♪

体温計に表示されたのは39.8の文字。

「すごい熱高いじゃん……。辛いのに、我慢してるの?」

そう耳元で聞くと、朱鳥はうるうるとした目で俺の顔をジッと見た。

それからチラッと北斗の方を見て、それから俺の服に顔をうずめた。

すると、北斗は察したように頷いて

「楓摩、俺、もう帰るよ。楓摩帰ってきたし、朱鳥ちゃんも二人きりの方が安心出来るもんね。」

と言った。

「うん、ありがとう。今日1日ごめんね、助かったよ。」

「ううん。お互い様さ。じゃあ、俺帰るね。」
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