ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
朱鳥を背もたれの倒した助手席に寝かせ、もう一度毛布をかけ直す。

「朱鳥、吐きそうになったら、ここに吐いていいからね。」

そう言って、朱鳥に小さいバケツを手渡す。

「どうしても、車の揺れが気持ち悪すぎたり、なにかあったら教えてね。」

俺は、運転席に乗って、車の暖房をつけてから急いで病院へ向かった。
















車の中で何度も苦しそうに吐く朱鳥。

朝以来何も食べてないし飲んでないから、もう胃から出るものもないはずなのに、吐き気は止まらないようで吐き続ける。

俺は、それを気にしながらも、急いで車を走らせ続ける。

家を出てから数分経った時

「………………ふ………ま……」

そう弱々しい声が聞こえた。

「どうした?」

俺は、運転をしながら、どこか一度止められる場所を探す。

「……前………………見えな…ぃ……」

「ちょっと、待って。」

俺は、近くのコンビニの駐車場に一度車を止めてから、朱鳥の様子を見た。

「朱鳥、意識はある?」

朱鳥はコクンと頷く。

「前見えないって、真っ暗な感じ?」

「チカチカ……する…」

「そっか。じゃあ、ちょっとまぶた触るね。」

下まぶたを下げて見ると、真っ白。

さっきよりも、貧血と脱水も進んでいるな……

「ごめんね、朱鳥。不安だし、苦しいとも思うけど、あと少しで病院だから、それまでちょっと我慢してね。」

朱鳥は小さく、コクンと頷いた。
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