ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
「朱鳥…」

そっと病室に入るとそこには汗をかきながら眠る朱鳥がいた。

俺はベッドの隣の椅子に腰をかけて、それから持ってきていたハンカチで朱鳥の汗を拭いてあげる。

朱鳥の濡れた前髪をかき分けると朱鳥はうっすら目を開けた。

「ん…………」

「あ、ごめんね。起こしちゃった?」

朱鳥は朦朧としているのか、ボーッとしたような目で俺を見つめる。

「…ん………………ふ……ま……?」

「うん。そうだよ。…朱鳥、大丈夫?熱、辛そうだね……」

俺がそう言って朱鳥の頭を撫でると、朱鳥は

「…だ………………じょ……ぶ…………だよ…」

と途切れ途切れに言って、それから小さく微笑んだ。

……でも、俺にはそれが、作り笑いだということがすぐにわかった。

きっと、また俺を心配させないように…って我慢してるんだな……

そう思ったけど、今はそれを口に出さないことにした。

とりあえず、頑張って笑顔を作っている朱鳥が……なんというか、儚くて…

俺は朱鳥の手をギュッと握った。

そして

「…朱鳥、ギュッしてもいい?」

今日は俺からそう言った。
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