TONE ~シークレットライブ~
 マイクをスタンドにセットし直して、

「出来たての新曲、いくよ」

 真正面を向いた表情は笑いを収めた鋭い瞳。

 重低音のリズムに激しいギターのイントロ。電子音が響き、マキの艶めいた声が重なる。

 あんなに爽やかな声が曲が変わるだけで何でこんなに怪しく色気を感じる声になるのか。

 音に合わせてマイクスタンドを伝う指が妙に艶めかしい。

 次曲へいくための冗談のように話していたが、本当に2時間前だったんだね。

 2時間でよくこんな風に編曲したね、ユウトくん。

 電話に向かってのあの驚きの声を聞いた私としては、尊敬の思いだ。

 そんな感想を頭の隅で思いながら夢中で身体に入り込んでくる音を感じていた。
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